えびっちょのお話

作家 北見すみれの作品集です

とも君と赤ちゃん

ある日3歳のとも君は、お母さんのお腹が急にふくらんでいるのでびっくりしました。

とも君は、お母さんに聞きました。

「お母さんどうしてお腹ふくらんでるの」

するとお母さんが

「あのねとも君、お母さんのお腹にいま赤ちゃんがねんねしているのよ」

「赤ちゃん」

ととも君がびっくりしたように言いました。


「そう、赤ちゃんよ。とも君の弟か妹の赤ちゃん、

とも君、赤ちゃんが生まれるまでお母さんのお腹さすったり、赤ちゃん赤ちゃんって何かお話してあげてね。」

とお母さんがいいました。


とも君はふと「アーお母さんにもうでんぐりがえしさせてもらえないんだな」と

がっかりしました。

ある日お母さんが「とも君お母さんのお腹に耳あててみる」といいました。

とも君は「うん」といってお母さんのお腹に耳をあててみました。

すると不思議。お母さんのお腹の中から海の波のような音が聞こえました。


「わあ赤ちゃんはお母さんのお腹の海でゆらゆらねんねしているんだあ」

ととも君はうれしく思いました。

そしてそのまま目をつむるとまっさおな波打つ海がみえてきました。


海の上に雲のようなものが出てきてスーッと上にあがりました。

とも君も一緒に背中にはねがはえたようにスーと雲の上にあがりました。

 

雲の上はひろくてきれいなお花がたくさんはえていました。

そこに白いふわふわした服をきた小さな女の子が3、4人手をつないでおどっていました。

とても楽しそうにおどっていたので、とも君はいっしょにいれてもらおうと

女の子たちにちかよりました。

すると一人の女の子が踊りの輪の中からはなれてとも君のところに来ました。

とも君はびっくりしたけど「きみはだれ」と聞きました。


「わたしは前にひろしまのげんばくでひばくして死んだの」

と言いました。

とも君は戦争のこともひばくのことも死ぬということも知らなかったけど何か

こわい大変なことのように思いました。

女の子は明るく答えました。


「私は体中ひばくしたけど天空の神様に治していただいて、ほらもうてのひらだけよ」と言いました。


とも君がてのひらをみるとそこにやけどのあとがありました。

女の子はやけどがなおったら私生まれ変わるのとニコニコしていいました。


そしてお花畑も女の子も女の子たちもスーと消えました。

それと同時にとも君も目をパチとあけました。

お母さんのお腹はいままでどおりで海の音がしました。


それから数カ月して、お母さんは病院で赤ちゃんを無事出産しました。

とも君が目をつむっている間みた女の子によく似たあかちゃんで、

手のひらにまあるいハート型のようなうす紅色のはんてんがありました。


とも君はあの女の子かなあと思ってうれしくて一生けんめい

ほっぺにチューしたりお手手をにぎったりして遊びました。

お父さんもお母さんも五体満足な赤ちゃんだったのでほっと胸をなでおりしニコニコしてました。


病院から退院の時、先生もかんごふさんも笑顔で見送って下さいました。


とも君、妹ができて よかったね。