えびっちょのお話

作家 北見すみれの作品集です

満月の夜に

吾子よ おまえは言った。

「パパとママ、ケンカしたんだ。」

満月の夜

バアの私は

ただ だまって聞いていた

吾子よ

おまえはまだ幼い

でも

幼い心で

一生けんめい 淋しさと

悲しみとにたえて

満月の夜

母子寮からの帰り

タクシーの中

月に心をたくして

バアだけに

打ちあけてくれた。

 

バアは言った

「みてごらん まあるい月は

ずうっと おまえについてくるよ」

どこまでも

どこまでも

ゆっくり 変わりなく

おまえに ついてくるよ

きっと

明日になり

明るい太陽がさすと

吾子よ

おまえの心は

満月の夜の

静かでつらかった心が

まあるい心になって

淋しさと悲しみをつつみ込んで

あかるい太陽になって

輝くよ

 

吾子よ

暗闇に輝く満月は

おまえについてきて

明日の

明るい太陽の下へと

導いてくれるよ

吾子よ

頑張れ

満月の夜の悲しみや淋しさは

大きなまあるい心になって

おまえを少しずつ励まして

いつも太陽の下で

笑って 走って

元気よくすごくことを

バアは願っているよ

 

暗闇の中で光る

まあるい心は

淋しくて悲しいけれど

時は

明日にむかって

ゆるやかに

おまえを

きっとつつみ込んでくれるだろう

バアは また思ったよ

頑張れ 吾子よ